客先常駐というのはSEにとっては苦労とストレスが絶えない働き方だと思います。
なぜそんなことが言えるのかというと、私は新卒で入社した会社がまさにエンジニアを現場に送り出すだけのエセIT企業だったからです。
しかも現場にはチームで常駐するのではなくなぜか新人エンジニアである私一人で赴く羽目になりましたし、現場はいつも営業担当が言うのとまったく違う環境ですり減った末に1年ちょっとで逃げるように退職してしまいました。
Slerや大手ベンダーから業務を受けるような会社に勤めていると、客先に行くのが当たり前のようになってしまいます。
他業種や業界に就職した学生時代の友達と飲んでいると、「自分の会社にいないこと」「自分のデスクがないこと」にギャップを感じるでしょう?
もしあなたがSEというのは現場に行くのが当たり前であると思いつつ、周りの人と比較したときに「こんな働き方でいいのか?」と悩むのであれば今すぐ、その生活を変えるために行動をしなければなりません。
客先常駐が嫌なエンジニアは多い
今の日本の開発現場では当たり前のようになっている客先常駐ですが、その内容はストレスフルで負担が大きいのは言うまでもありません。
それは私もそうですし、新卒で入社した同期が何人も、
- 都心にある自社で勤務できるもんだと思っていた
- 案件のたびに出社先やチームメンバーが変わるから疲れる疲れるからいやだ
- あの現場糞だから変えてくれ!変えないなら辞める!なんであいつだけ自社でゆっくり開発案件をやってるんだよ!
などなど様々な葛藤を抱きつつ、退職をしています。
現場のエンジニアはこんなに嫌がっている客先常駐ですが、なぜなくならないのでしょうか?
客先常駐がなくならない理由
客先にとってコストがかからないからクライアントである客先にとって、エンジニアに常駐してもらうことはものすごくコストが良いことです。
簡単な話ですが、自社でエンジニアを採用して教育して、毎月給料と福利厚生を与え、賞与を与えて、とするよりも最初からある程度使えるエンジニアを外部から連れてきてしまった方がコストも手間も少なくて済みます。
しかも客先からしてみたら常にエンジニアが必要かと言われれば微妙なところです。商社だった場合、業務改善のためのシステムは必要ですが、1度システムが完成してしまえばあとは時々保守・運用をしてくれる人がいればよいです。
そんな中、その開発のためだけにエンジニアを募集して雇うというのはよほど規模が大きい会社でもない限り難しいところです。
とくに正社員の解雇が難しい日本において、開発のためにエンジニアを連れてきて、プロジェクトが終わった瞬間に「はい、さようなら」なんて解雇するわけにはいきません。かと言ってやることもなくなってしまったエンジニアをずっと自社に置いておくわけにもいきません。
海外であれば、開発のたびにエンジニアを連れてきてプロジェクトの解散とともに辞めてもらい、次の募集案件でまた移籍してもらうということが一般的ではありますが日本では難しいところです。
結果としてコストが掛からない客先常駐というエンジニアの使い方が流行ってしまい、常駐をするだけの名ばかりIT業が盛んになってしまうという悪循環が起こってしまいます。
IT企業にとっても「人売り」は得である
クライアント側のコストを削減したいからエンジニアを外部から連れてくるというのには納得ができたかと思います。ですが、IT企業側にとっても「人売りビジネス」はおいしいです。
本来のビジネスであれば、自社で製品を作って販売して営業して利益を上げるという商流が一般的かと思います。
ですが、それを行うには利益が出るかわからない製品に従業員を従事させて、毎月場所代などの固定費を支払わなければなりません。
またITにおいては特定のパッケージソフトを作る以外にも、クライアントに業務改善やECサイトなど事業的側面でITを提案して、コンサルティングあるいは実際のシステム開発を提案、そこで「付加価値」を生み出し利益を得るということもできます。
これもパッケージソフトを作るのと同様、受注できるかどうかわからない事業にエンジニアを採用して、仮に仕事がなくても毎月給料だけは支払わなければなりません。
そのため会社のキャッシュフローで考えたら両社ともリスクが出てしまいます。
ですが、人売りビジネスの場合、常駐して欲しいという企業は星の数ほどいるので比較的簡単に利益を上げることができます。
とくに大手Slerやベンダーから下請けとして仕事を受注をしマージンを引いている(中間搾取)、2次受け3次受けとして配属させる案件なら吐いて捨てるほどあります。
従業員を自社において置かなくてよいため、事務所や作業PCの用意などをしなくて済み、固定費も極力安く抑えることができます。
つまり、客先常駐は人を雇ってどんどん現場に飛ばせば飛ばすほど、確実に儲かるシステムです。
客先常駐の問題点
正直、私が会社経営者なら当たるかどうかも分からないサービス開発(販売)よりも、客先常駐を行うでしょう。
ですが、エンジニアの視点に立った時は、極力早く客先常駐という働き方から脱却するべきだと考えています。
実際に客先常駐エンジニアとして、現場で働いていた私が客先常駐の問題点をまとめました。
SEの精神的なストレスが多い
自分の会社と違い客先にいるため、かなり気を使うことを強いられます。
自社であれば少し疲れたときに姿勢を崩しても問題ありませんが、客先の場合はそれもままなりません。
イメージとしては8時間の勤務時間常に面接室にいるようなものでしょうか?
少し小話をしているだけで本社にクレームが入ったり、トイレに行くにしても毎回許可を求められたり、休憩ひとつ取るのにも厳しく管理さえるなど、過酷な扱いを受けるケースは少なくありません。
また現場によっては発注側と客先常駐しているという受注側の力関係を良いことに、契約内容にない作業を強要してきたり、強い口調で罵られたり、パワハラを受けたりということもありました。
ただでさえストレスフルな客先常駐ですが、私の場合はさらに前述のとおり一人で常駐する羽目になりました。
困ったことやわからないこと、トラブルがあったときに、近くに質問や助けになってくれる先輩や上司がいない、周りからは「お前プロなんだからなんでもできるよな?」と言わんばかりにいろいろ要求されるのは本当にしんどかったです。
スキルが身につかない
いくつか現場を経験して思ったのが客先常駐のSEは、客先の指示通りに作業するためだけの作業要員になってしまうため、スキルが身に付きません。
当然ながら期間限定で2次受けや3次受けで連れてこられているわけなので、プロジェクトの方向性について決めたりだとか、マネジメントや要件定義などの上流工程に参加することはできず、1つのモジュールを作ったり、デバックやテストだけ永遠とするような下流工程での参加ばかりになってしまいます。
プログラミングなどの生産的なことに携われるのはまだよいことで、私の場合ははサーバーの監視(監視といっても何かエラー信号が出たらSEに電話するだけのSE)、エンドユーザーの電話サポートやPCなどのキッティングなどで「これアルバイト雇えばよくない?」というのがほとんどでした。
もちろん金融機関や情報が流失してしまっては困るような、案件の開発で常駐している場合はものすごく勉強になるしスキルアップになりますが、大多数の常駐案件は大したスキルも身につかなれば、職務経歴書にも書けないようなものばかりです。
帰属意識が全く湧かない
客先常駐を生業としている会社に行くと、中々自社に帰ることがなく帰属意識が薄れてしまいます。
愛社精神というのは以外に大事なモチベーションの1つで、私は帰属意識がないせいで「なんかあったらすぐに辞めてやる」ってスタンスで仕事に臨んでいました。
そんな状態では自己を高めようと気もなくなり、仕事のクオリティを上げようという気概もどこかに消えてしまいます。
客先常駐と派遣の違い
当然客先常駐エンジニアは正社員であるため、派遣社員よりは待遇がいいです。
よほど酷い会社でない限り、厚生年金や健保組合にも入れます。
ですが仕事の実態はさして派遣と変わらないように感じました。
基本的には現場に行き、現場の作業員の指示に従うため間隔としては派遣社員とさほど変わらないような気がします。
派遣社員の場合は時間当たりで給料が振り込まれますが、名ばかり正社員の客先常駐社員は契約時間内でのサビ残が普通にあるので、もしかしたら労働環境だけで見れば派遣社員の方が良いかもしれません。
あとは派遣社員の場合大手企業やその関連会社の案件が多いため、正社員でないにしろホワイトであることも多いです。
客先常駐を辞めたいエンジニアが取るべき対処法
最初に言うと、客先常駐という働き方から脱却したいのであれば、転職前提で動くことをおすすめします。
というのも客先常駐でクソみたいなところに飛ばすような会社は、エンジニアを派遣させるビジネススタイルに味を占めています。
上の方でもお伝えした通り常駐というのはビジネススタイルとしてありえないくらいローリスクのビジネスであるため無くなることはありませんし、あなたがどうしようが恐らく変わらないからです。
だから交渉しても、我慢して一所懸命働いてもなきを見ることになる確率が高いです。
実際私は常駐会社から転職することによって、経験を積んで今はフリーランスとして活動していてあの頃に比べたらストレスもなく、かつ収入は上がりました。
対処法1:自社に戻してもらえるよう上長に掛け合う
客先常駐を辞めるためにまずするべきことは、自分の上長(上司)に掛け合う事です。
上司に相談して、「違うスキルを身に付けたい」「今のプロジェクトに不満がある」ということで案件を変えてもらいましょう。
ただ基本的には、エンジニアの要望で案件を変えてもらうことはまず通りませんし、そもそも常駐業務しか行ってないIT企業の場合は提案すること自体が無駄です。
でも、もしかしたらストレスフルなプロジェクトから外してもらえたり、クライアントに対してフォローを入れてもらえるかもしれません。
対処法2:診断書を貰い病欠になる
私のケースです。狙ってやっていたわけではないのですが、4次受けの案件で人間扱いされず深夜込みで1日15時間稼働していたら、心身ともに病んでしまいそのまま病院に行ったら就業不可能になってしまいました。
会社にもよりますが、基本的には常駐先の現場トラブルを嫌がるので就業不可の従業員を置いておきたくないですし、自社側も訴訟などのアクションを起こされると厄介なので、医者で診断書を貰えれば求職にしてくれる可能性が高いです。
そして、その診断書は精神科などに行けば割ともらえることが多いです。
もし、あなたが
- 寝付けなくなった
- メンタルの浮き沈みが激しい
- 好きなものを目の前にしても全然楽しめない
など、精神的にしんどいと感じているのであれば、一度病院に行ってみましょう。
就業不可になればちゃんとIT健保に所属している会社なら傷病手当が出ますし、累計の労働時間が12カ月を超えているのであればそのまま退職しても失業手当が出ます。(ただし自己都合退職の場合受給まで3カ月のラグがある)
私はその期間中に転職をしました。
対処法3:転職活動を行う
上述でもお伝えした通り、上司に訴えても本質的な「客先常駐は嫌だ!」という悩みから解放されることはありません。
そう思った私は、精神的に病んだのをキッカケに仕事を辞めて、転職活動を行いました。
「3年働いてないと転職先は見つからないんじゃないか?」と不安に思うかもしれませんが、実はそんなことはありません。
IT業界はココ数年売り手市場がずっと続いています。実務経験さえあれば転職はかなりしやすくなっています。
スキルがあるエンジニアであればもちろんのこと、スキルに自信のないエンジニアでも何かしらの転職先は絶対あります。(ただし転職活動中または転職後勉強は必要になりますが・・・)
客先常駐を辞めた後の仕事4選
客先常駐を辞めたあとの選択肢としては、正社員エンジニアであれば「社内SE」「Web系エンジニア」が良いでしょう。
また、今はスキルが足りないから勉強をしたい・収入さえあれば今は正社員じゃなくていいというのなら高時給の「派遣エンジニア」というプランもあります。
どうしてもIT業界はもう嫌だ!と思うのであれば、異業種転職も検討してみてはいかがでしょう?
私は客先常駐で精神を病んで退職する選択肢を取りました。当時は「もう少し頑張れよ」「最低3年は働かないと就職に響くぞ」などいろいろなことを言われました。
ですが、今にして思えばあの時転職という道を選んで良かったと思っています。
年収は100万円近くアップしましたし、その後営業やマーケティングなどエンジニアリング以外のスキルを身に着けて独立することもできました。
もし、「今の職場が辛い」と感じているのであれば、仕事を変えるのも手です。
その1:社内SEに転職する
社内SEはシステムエンジニアの中でも、かなりホワイトであることが多いです。
社内SEの場合、顧客は社内ということになるため、クライアント向けの開発業務に比べて要求度は低くう、小さい規模の開発であることが多いです。
また社内SEの場合、自分で開発しないケースも多く、社員で要件をまとめたら開発業務自体は他所の会社に外注することもできます。
ストレスが掛かる顧客対応を行ったり、社内での厳しい設計書レビューを行う必要もありませんし、深夜に作業を行ったり、障害コールによって休日に振り回されることもありません。
しかも、社内SEの勤務先は非IT企業になるため、ITやパソコンに強くない会社だとたちまち人気者になれる可能性もあります。
その2:WEB系エンジニアに就職する
インターネットサービスの開発を行うWEBエンジニア。近年エンジニアの中でも憧れが多いポジション。
WEB系エンジニアの場合、SIer(常駐)エンジニアに比べて高いスキルを求められますが、開発の考え方や手法が新しい場合が多く、効率的な業務環境であることからマネジメントやコーディングのストレスがなく働きやすいです。
物づくりをしているという実感が得られやすいですし、開発手法も新しいものに触れることができます。(アジャイル開発や最新言語など)
何より、自社のサービス開発を行うため、客先常駐のような滅茶苦茶な労働環境になる可能性も低いです。
エンジニアの転職ならレバテック
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その3:異業種に転職する
過酷な思いをしたのであれば「もうSEを続けるのは嫌だ!」と思い異業種に転職を考える人も多いかと思います。
実際私も、IT企業からIT企業へ転職しましたが、営業やマーケティングなどプログラミング以外の仕事をしました。
また、私の知り合いの場合は、システムエンジニアから「経理」や「事務」などの仕事へ転職した人もいます。
経理の場合は、正社員として働くには実務経験が必要なことが多いため、最初は派遣社員としてスキルを磨きつつという場合が多いです。
事務の場合は、パソコン(エクセル)が使えるとそれだけで重宝されるケースが多いため、経理よりも楽に仕事が見つかります。
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20代で異業種転職ならジェイック
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その4:派遣エンジニアとして働く
正社員としての就職ではないですが、派遣エンジニアというのも選択肢としてアリだと思っています。
実際私も、独立前は「貯金はなく、かつ独立準備で長時間残業ができない」というときに派遣エンジニアもやっていました。
独立準備期間中というケースだけでなく、「これから何がしたいか分からないけどとりあえずお金は必要なので働く意思がある」という人も派遣エンジニアとして働くのはどうでしょう。
「仕事が嫌すぎて明日にでも辞めたい」という人はスパッと辞めて、しばらくの間派遣エンジニアとしてお金を稼ぎながらキャリアを積み、余暇の時間で資格勉強や技術習得に励みましょう。
IT業界自体嫌だというのであれば、その間に経理資格や英語の勉強、行政書士の勉強、など次に働きたい業界の勉強をしても良いでしょう。
派遣エンジニアとしての働くのであれば、転職のdodaが運営している「パーソナルテクノロジースタッフ」という紹介会社が業界でもかなり強いので、一度相談を受けると良いでしょう。
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